2020年2月12日、石橋通宏参議院議員、初鹿明博衆議院議員、松田功衆議院議員同席の下、茨城県牛久市にある東日本入国管理センターにて面会活動を行っている難民支援協会を含む団体・個人8名で、センターとの意見交換を行いました。以下、意見交換会の中で出入国在留管理庁(以下、入管庁)から示された数値(「概数として」示されています)に基づき、難民支援協会が行った収容の状況に関する分析を報告いたします(意見交換会に際して入管庁より示された数値と、2020年2月25日から3月2日にかけて、追加で提供された数値の一部は、記事末尾に掲載しております)。
過去の意見交換会の報告はこちらからご覧ください:2019年(東京出入国在留管理局)、2018年(東日本入国管理センター)、2016年(東日本入国管理センター)
また、難民申請者の収容に関する課題は、こちらで詳しく解説しています。
【ポイント①】被収容者のうち約75%が、日本政府に庇護を求めている
2020年1月1日時点で東日本入国管理センターに収容されている237人のうち、約75%にあたる182人が、難民認定申請中もしくは難民関係の訴訟を行っていることが分かりました。下のグラフが示すとおり、その割合は2016年の約66%から年々上昇しています。
図表1:被収容者に占める難民申請者の割合
また、東日本入国管理センターは、成田空港で庇護を希望したものの、上陸が許可されずに収容令書や退去強制令書が発付された人が収容される施設でもあります。その数は2017年から下記のように推移しており、成田空港で難民申請をした人の多くが、入国を許されないままに、収容されている可能性があります。
図表2:成田空港からの移送数
2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|
東日本入国管理センター入所者数 | 505人 | 204人 | 192人 |
うち、成田空港からの入所者数 | 128人 | 22人 | 18人 |
参考:成田空港での難民申請者数 | 129人 | 11人(上半期) ※下半期:統計なし | 統計なし |
※2020年の東日本入国管理センター訪問後の追加質問に対して、概数として示された数、および「移住者と連帯する全国ネットワーク」省庁交渉データより、難民支援協会作成。なお、退去強制令書に基づいて収容された者の数のみを計上。
空港で庇護を求めた方の収容を回避するため、難民支援協会では、なんみんフォーラム(FRJ)の加盟団体の一員として、空港で庇護を求めた方の住居を確保する事業(収容代替措置)に取り組んでいます。こういった官民連携の取組みの拡大により、庇護を求めてやってきた方の多くが、日本の地を踏むことすらもできずに収容されてしまう現状を変えることができればと思います。
※収容代替措置事業の実績については、こちらからご覧ください。
【ポイント②】仮放免制度の厳格化により、収容が長期化している
退去強制令書による収容には期限が定められておらず、送還に応じられない事情がある場合は、仮放免(収容された外国人に対して、入管庁が在留資格を与えないまま、一定期間ごとに出頭する義務や移動の制限を条件に、一時的に収容を解く措置)が許可されない限り、収容が継続されます。2016年以降の収容期間の内訳(図表3)を見ると、6か月以上の「長期収容」の割合が年々上昇していることが分かります。2018年から2019年にかけては、95%の方が6か月以上に渡って収容されていました。
図表3:東日本入国管理センターにおける、収容期間の内訳
収容の長期化の背景には、仮放免制度の厳格化があります。特に2018年に作成された「仮放免運用方針(2018年2月28日付け法務省管警第43号法務省入国管理局長指示)」では、「送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り,原則,送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める(下線は難民支援協会による)」とされました。それ以前の方針では、「…難民認定申請中…など送還に支障のある事情を有するために、送還の見込みが立たない者については、更なる仮放免の活用を図る(下線は難民支援協会による)」とされていたので、大きな政策転換と言えます。
2020年には6か月未満の被収容者数が増えていますが、その背景として2019年6月の大村入国管理センターでの飢餓死以降、ハンガーストライキを行った被収容者を仮放免し、2週間後に再収容する措置が行われていることが挙げられます(※1)。一方、2018年に8%にまで下がった仮放免許可率は2019年も21%に留まっており、依然として多くの方が仮放免されないままに、長期間にわたって収容されていることが伺えます。
図表4:東日本入国管理センターにおける、仮放免の許可状況
【ポイント③】収容の長期化が、被収容者の心身をむしばんでいる
被収容者数が減少したにもかかわらず、東日本入国管理センターにおける自傷行為や庁内診療の数が急増しており、長期にわたる収容が、被収容者の心身に多大な影響を及ぼしていることが分かりました。
図表5:東日本入国管理センターにおける、診療実績および自傷行為数
このような状況において、医師の確保はより重要な課題と言えます。今回の意見交換会では、常勤医師の確保の難しさについて議論が行われました。東日本入国管理センターには全国の収容施設で唯一の常勤医師がいましたが、2019年の10月にその方が退職されて以降、常勤医師がいる収容施設が現在は全国にひとつもありません。
カメルーンの方が医療放置の末に亡くなったとされる事件(2014年)や、インドの方の自殺(2018年)、そしてナイジェリアの方の飢餓死(2019年)など、収容施設における死亡事件が後を絶ちません。非常勤医師を前提とした医療体制、とりわけ緊急時の対応策の検討が急務と考えます。終わりの見えない収容は、被収容者の生命や健康を不必要に脅かします。こういった方たちの命や健康に対する、入管庁の責任が問われていると言えるでしょう。
【まとめ】収容に関する制度の改善に向けて
入管行政における収容は「最後の手段」としてのみ用いられるべきという国際的な原則(※2)に基づき、収容を最小限にとどめるための仮放免制度の改善、上限期間の設定などが求められます。また、収容施設における処遇についても、抜本的な見直しが必要です。
現在、法務大臣の私的懇談会である「出入国管理政策懇談会」下に「収容・送還に関する専門部会」が設置され、法改正も視野に入れた議論が行われています。庇護を求めて日本にやってきたのにも関わらず、送還を前提とした収容による「第二の迫害」に苦しんでいる方たちが一日でも早く解放されるように、そして、これ以上の難民申請者が収容されることがないように、専門部会での議論に期待するとともに、難民支援協会としても働きかけを続けます。
※1 毎日新聞「『2週間だけ仮放免』繰り返される外国人長期収容『一瞬息させ、水に沈めるようだ』」(2019年11月12日)
※2 例えば「安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」(2018年)目的13:Use migration detention only as a measure of last resort and work towards alternatives(入管収容は最後の手段としてのみ使用し、代替措置を追及すること)
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以下、2020年2月12日の意見交換会に際して「概数として」入管庁より示された数値と、2020年2月25日から3月2日にかけて、追加で提供された数値の一部を掲載します。
※ リンク先におけるURL変更により、一部URL修正(2022年1月)