入管庁より、「令和4年における難民認定者数等について」が発表されました。難民認定数は過去最多の202人となる一方で、難民不認定とされた人の数は1万人を超えています(一次審査・審査請求の合計)。難民として保護されるべき人が保護されていない現状を踏まえ、⽇本に逃れた難⺠を国際基準に則って保護するための、包括的で公平な庇護制度が確⽴される必要があります。
ミャンマー出身者については、26人が認定される一方で、2,000人近くが不認定とされており(一次審査・審査請求の合計)、人道配慮による在留許可は1,682人です。クーデターが発生した2021年と合計しても、認定数は58人に留まります。
また、難民認定された人の大半(147人)を占めるアフガニスタン出身者の多くは、カブール陥落後に日本への退避が認められた元大使館職員やその家族です。2021年秋に入国してからしばらくの間、難民申請の選択肢が提示されることはなく、日本政府との契約終了前に「最後の手段」として難民申請が行われたという経緯がありました。それまでの間に、中長期的な見通しが立たない日本での生活を諦めて出国した人もいます。
難民保護の目的を果たすための、法制度や運用の改善が必要です。
なお本日、入管庁から「難民該当性判断の手引」が公表されました。国際基準に則った難民認定基準が本来作成されるべきところ、日本の難民該当性判断のポイントを整理するとの位置付けにとどめられている点を強く懸念します。また、難民該当性の判断を左右する重要な点(信憑性評価や灰色の利益の原則など)が含まれておらず不十分です。さらに、裁量的な判断が可能な記述が散見される中で、保護対象の拡大を否定するような発信が入管庁から予め行われている点も課題です。
そもそも、この「手引」は政府の有識者会議(難民認定制度に関する専門部会)による8年前の提言を受けて作成されたものであり、難民保護状況の改善に向けた施策に政府が遅々として取り組まなかったことが見て取れます。
ただし、これまでの日本における難民の定義の解釈からの変更と思われる点が一部あります。そのため、これまでの狭い解釈によって「不認定」とされた人が、今回の「手引」を基に再度の審査を受ける権利が保障されるべきです(※)。今国会に提出された入管法改正案における3回目以降の難民申請者の送還を可能にする規定は、このような再審査の権利を奪い、日本に逃れた難民の命や安心を脅かすものとして、認められません。
※ 例えば、難民申請者が国籍国の保護を受けることができるかの判断において、「手引」では効果的な保護の有無を基準とするべきとしています。一方、本日発表された2022年の「難民と認定しなかった事例」においては、本国政府当局による「放置、助長」の有無が判断基準とされており、難民保護の必要性が厳しく評価されていることが懸念されます。
当会の意見の詳細は、近日公開予定の意見書をご覧ください。