入管法改定案は、複数回の難民申請者に対しての送還停止効の例外の設定など、難民保護の観点から重大な問題があるものでした。この法案の成立は、私たちが支援している難民申請者にとって、難民認定に対する改善がなされることなく、送還のリスクを高めるものです。多くの申請者は、そのような検討がされていることさえ知ることができません。また、声を出すことも困難です。そのような中で、当会は入管法改定案の成立見送りを歓迎します。
当会では、入管法改定案の国会での審議に先立ち、法案に対しての意見をまとめ、各党の議員や政府を含め、広くお伝えしてきました。(参考)
3月には、より多くの方々に法案の問題点を知ってもらい、寄せられた声を国会にも届けるべく、Twitterを中心に「#難民の送還ではなく保護を」キャンペーンを開始しました(参考)。
このキャンペーンには非常に多くの方々に賛同をいただくこととなり、入管法改定案の見送りが報道された5月18日時点で、以下のような規模での反響となりました。
- 当会からのツイート(上記ハッシュタグを使ったもの)のリツイート・いいね:24,510件
- 上記ハッシュタグを使ったツイート:8,500以上
(当会からのツイートを含む)
多くの方々がオンラインでも意見を述べられています。例えば以下のようなコメントがあります(ツイートからの抜粋)。
- 日本の難民受け入れの基準が、世界標準に沿った人権侵害のない内容となるような法改正を望みます
- 保護を必要とする人を保護してください
- 難民認定をほとんどしない日本に逃げざるを得ず、そして留まらずを得ない人々の状況や事情を、もっと真剣に受け止めなければ
- これはかれらの問題ではなく、わたしたちの問題だと思います
法案成立が見送られた後も、引き続き多くの方が声を上げています。日本に逃れてきた難民を取り巻く問題は、残念ながら依然として、日本社会で広く共有されているものではないかもしれません。しかし、今回多くの方が難民保護に向けて声を上げたことを、今後の難民保護の改善にも繋げていきたいと考えています。
現行法のもとでの運用にも、難民保護の観点から多くの問題が存在しています。例えば、難民認定においては、審査基準が不適切であり、適正手続も他の難民条約締約国に比べて保障されていません。審査請求(一次審査に対する不服申立て)が形骸化していること、難民認定業務が出入国管理から独立していないことも問題です。さらに、難民申請者の処遇についても、早急な改善が必要です。(参考)
入管法改定案は今国会での成立は見送られましたが、再び同様の提案がなされることも想定されます。日本に逃れてきた難民の方々が適切に保護され、安心して暮らしていけるよう、当会は、この問題への社会の関心を広げ、また、この問題に取り組む多くの方々と協力を続け、今後も制度の改善に向けて取り組んでまいります。