解説記事・声明等

2024年(令和6年)の難民認定者数を受けてのコメント

本日、出入国在留管理庁(以下、入管庁)より「令和6年における難民認定者数等について」が発表されました。
難民認定者数は190人と、昨年から113人減少したものの過去3番目の多さとなりました。一方で、難民として認定されるべき人が認定されていない状況は依然として続いています。難民申請者の出身国は92か国にのぼりますが、認定者の国籍は16か国にとどまっています。また、補完的保護や人道配慮も含めると2,186人に在留が認められましたが、その7割以上はウクライナ出身者でした。特定の国籍に偏ることなく、あらゆる出身国から逃れた人に対する公平な保護の実現を求めます。

難民認定者のうち5割以上(102人)をアフガニスタン出身者が占めましたが、その他の国籍も88人と増加傾向にあることは歓迎します。統計が確認できる限り過去最多の18人が認定されたイエメンについて、入管庁は、出身国情報を収集・整理した資料を新たに公表しています。難民認定制度の公平性・透明性の向上に資するこのような取り組みが、ミャンマー※1を含む他の国籍に展開されることを期待します。

日本での難民認定者数の推移(国籍別)。
出典:入管庁データより。各年の認定者数において、上位4か国に入っている国を凡例として提示。その他の国籍の合算を「その他」として提示。

一方、難民として認定されるべき人を認定するための審査が適正に実施されていないのではないかという懸念はなおも残ります。難民不認定者数は8,269人(一次審査 5,117人、審査請求 3,152人)でした。当会が把握している限りでも、例えば、日本への上陸が認められずに空港で収容された方について、証拠提出の機会が無いままに、早期に不認定の決定が出る傾向が続いています。また、出身国の人権状況や特定の民族に対する迫害など、判断の根拠とすべき情報が十分に検討された様子がみられない不認定事例も散見されます。

審査期間の長期化により、難民として認定するべき人を、適切に認定することができていない点も強く懸念します。審査期間は平均約2年11か月(うち一次審査は約1年10か月)ですが、当会では難民申請から5年以上が経過するも、いまだ一次審査中の事例を複数把握しています。早期に審査を行うとされているA案件(「難民…である可能性が高いと思われる」とされた案件)にもかかわらず、2年以上待たされている事例も珍しくありません。補完的保護対象者認定申請では、約3か月の平均審査期間で大多数が認定されているのとは対照的です。このように審査期間が長期化する中で、難民申請者が逃れてきたその時点で感じていた恐怖や出身国の情勢、その後の変化に基づく判断がより一層困難となります。

難民申請者数は12,373人と、前年に引き続き1万人を超えています。難民保護のための体制の確保が重要です。第一に、難民審査に必要な人員や予算を十分に確保することを求めます。難民保護を目的とした法律や、難民保護に関する専門性、独立性が担保された組織の創設など、抜本的な改善も必要です。第二に、難民申請者への公的支援の拡充を求めます。昨年度の当会への相談者数は、過去最多の996人でした。来日直後で頼れる先がなく、生活に困窮する方たちが多くいます。当会への相談状況だけを見ても、50人以上の難民申請者が常に住居支援を必要としており、野宿を余儀なくされる方も後を絶ちません。難民認定申請者保護事業にかかる予算の確保や、住居支援の拡充を求めます(詳しくはこちら)。

※当会の意見の詳細は、近日公開予定の意見書をご覧ください。

注1 ミャンマーでクーデターが発生した2021年以降の同国出身の難民申請者数の合計は1,861人、難民認定者数の合計は121人。

【参考1】
2023年12月より、補完的保護対象者認定制度が創設されました。
手続きの入口が、①難民申請・補完的保護申請と②補完的保護申請と2つあります。

難民認定申請と補完的保護申請の手続き図。

  ・2024年の状況

※注:同年に申請受付ないしは認定等判断がされた人の数である。難民認定等の結果は、前年までの申請も含まれており、2024年の申請数に対しての結果であるとは限らない(つまり、例えば、190人の難民認定者数は、12,373人の申請者数を分母としない)。

難民認定申請および補完的保護申請手続きにおける、2024の状況。

【参考2】
入管庁は、難民申請手続きの処理の迅速化等を目的とし、難民認定申請時に案件をA~Dに振り分けています。