活動レポート

わたしと難民支援|JARにはただ存在していてほしい。

難民支援協会(JAR)の活動は、難民スペシャルサポーター(毎月の寄付)を含めた寄付者やボランティアなどの皆さまからの支えで成り立っています。「わたしと難民支援」ではそんな支援者の思いをお届けします。
今回は、城島サナさん(ベトナム家庭料理トュンライのオーナー/NPO法人glolabの理事兼コーディネーター/2015年から難民スペシャルサポーター)よりお話を伺いました。


元当事者として、逃れてきた難民へのリスペクトがある

私がJARや難民を支援するのは、自分が「当事者」であることに関係しています。私の両親はベトナムからボートでフィリピンに逃れた難民でした。私はフィリピンの難民キャンプで生まれ、3歳で両親とともに来日しました。幼少期は家族に加えて、気のおけない友だち、親切な近所の大人、塾や学校の先生に助けてもらいながら育つことができました。

当事者といっても、恐怖や不安を抱えていたのは両親ですし、私は小さかったのであまり覚えていません。「元当事者」といった方がいいかもしれませんね。

難民の方々に対しては、難民に厳しい環境の日本で、懸命に生きていることにリスペクトしかないです。国を離れ、よくぞここまでたどり着いたと…。

うれしかったJARとの出会いと、苦しかったインターン経験

JARを知ったのは大学生の頃です。卒業後の進路で、国外での国際貢献と、日本での難民・移民支援のどちらに進むか、悩んでいた頃です。そのとき、偶然JARが主催する難民アシスタント養成講座に参加したことが、JARとの出会いです。

JARという団体が存在することを知ったときは、うれしかったのを覚えています。

それまでは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など日本の国外にある難民支援の組織は知っていましたが、日本国内にも難民申請者や難民を多面的に支援する組織があることは知りませんでした。JARの取り組みを知って、この団体は、命からがら日本に逃れてきた人々の大きな拠り所になる、私も何かしらの貢献ができると直感的に感じました。

その後、JARのボランティアやインターンとして、さまざまな支援に携わる機会をいただきました。翻訳作業を通じて、難民申請の内容を垣間見る機会もありましたが、「なぜこれで認められないのか」「なぜこんなに書類をそろえないといけないのか」ともどかしく感じることが多々ありました。宿泊先の手配をするために、何度も電話をかけたことも記憶に残っています。支援を求めてくる方々が、こんなにも不安定でその日暮らしであることに驚きました。現状を理解する機会にはなりましたが、とても苦しい経験でもありました。

直接支援に関われない分、できる範囲で寄付を

社会人になって、難民スペシャルサポーターになりました。私は、インドシナ難民として来日したため無国籍の状態が続いていたので、まず自分の身分を安定させることを優先して一般企業に就職しました。しばらくは直接的に難民支援に関わることができない分、何らかの形で貢献していきたいという思いから寄付者になりました。また、インターンとして関わらせてもらい、資金調達が簡単ではないことを実感していましたので、できる範囲内で資金面から支援をしたい想いもありました。

毎月の寄付額は多くはありませんが、できる範囲で、無理なく続けられる金額を選びました。ライフステージによって寄付額は変わっていくと思いますが、JARは月額や単発寄付額を柔軟に設定できるのでありがたいです。細くても長く支援することが大事ですよね。

支援の「成果」ではなく、JARの「存在」に価値を感じる

寄付者としてなにか「すぐに目に見えるような成果」を求めるという発想は、私にはないかもしれません。そこに重きを置いてこなかったといいますか。JARは「存在している」、「存在し続ける」ことに価値があるんだと思います。

残念ながら、日本において難民認定を得るための道のりは当事者にとっても支援者にとっても長期に渡り過酷なケースが大半です。社会情勢などの影響をも受け、一筋縄にはいきません。そのような状況において、例えば難民申請件数に対して何件が難民認定に繋がったか、といった短期的な成果を求めることは意味がないと感じています。

あえて私なりの難民支援における成果を定義するならば、難民申請者や難民の方々が、精神的・肉体的・経済的に健やかに暮らせるようになることだと考えています。そのような状態に至るまでに長い年月がかかり、そこにはJARを含めた多くの人々の理解と多面的な支援が必要です。ですから、短期的な成果よりも、JARが存続し、一人でも多くの難民申請者や難民の方々の拠り所であり続けること、そしてJARを通じて人道的支援の重要性や多様性・複雑性を受容し共に生きることの大切さを発信し続けて欲しいと願っています。私も微力ながらその一翼を担い続けたいと思います。

JARのスタッフの皆さんは難民に想いを寄せ、ともに苦難を乗り越えようとしてくれる心強い存在です。法的支援や生活支援にとどまらず、就労支援やコミュニティ支援、政策提言、広報活動など本当に様々な取り組みをしている稀有な存在であり、ぜひ今後も精力的に活動を続けていただきたいです。

未来の支援者へー終わりが見えないからこそ、長く支えたい

NPOは究極的には団体が存在しなくなることを目標にすることもありますが、現実はそう簡単にはいきません。難民支援は長期的なものですし、今は終わりが見えない。だからこそ、寄付者としては長く支えたいと思っています。新たに難民支援に興味を持ってくれる人がいたら、元当事者として「ありがとう」と伝えたいです。そして、「できる範囲で無理なくやりましょう」とも。友達の勧めや難民をテーマにした映画を観たとか、知るきっかけは些細なことかもしれません。そんな、些細なきっかけを、ささやかでもいいから続けていけたらと思います。

現在、難民支援協会(JAR)の事務所には、支援を求める方が毎日訪れています。
難民の方々が安心して年を越せ、日本で暮らせるよう、活動を支えてください。