解説記事・声明等

2024年衆議院議員選挙:難民保護や外国人との共生に関する各政党の公約

2024年10月27日投開票の衆議院議員選挙に向けた各政党のマニフェスト(政権公約)のうち、難民保護や入管収容、外国人との共生に関する施策を抜粋してご紹介します。なお、本記事は衆議院解散前に議席を有していた政党を対象に、2024年10月15日時点で公開されているマニフェストを基に作成しています。各政党のマニフェストへのリンクは末尾に掲載しています。

※参考記事:各立候補者の難民保護に関する意識調査の結果や政党ごとの傾向は、こちらで紹介しています。

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1.難民や入管収容、送還に関する施策

【自由民主党】

<外交:651 人権外交の推進>

  • 二国間の「人権対話」の推進、権威ある国際NGOとの人権外交に関する対話枠組みの創設、外国人労働者との共生のための制度の強化、国際的に保護を必要とする難民等の受入れ改革等を追求します。

<多様性・共生社会:858 不法・偽装滞在者対策に資する体制の整備>

  • 関係省庁が連携し、在留カードの偽造事案に厳格に対応するなど不法・偽装滞在者対策を推進しつつ、入管法違反者の円滑な送還のための体制整備を進めます。日本人と外国人がともに安心して暮らせる社会の実現に向け、改正された入管法も適切に運用し、在留が認められない外国人の迅速な送還に取り組みます。

<多様性・共生社会:863 難民等の迅速かつ適正な保護・支援>

  • 2023年12月に開始された補完的保護対象者認定制度を適切に運用するとともに、補完的保護対象者として認定された方には、条約難民と同様に我が国での自立支援策の一環として、日本語教育や生活ガイダンスを受講できる「定住支援プログラム」を提供します。
  • 難民等の保護すべき方々を一層確実、迅速かつ安定的に保護するとともに、保護された方への適切な支援に取り組みます。

【立憲民主党】

<人権:多文化共生 / p.17>

  • 難民等の認定と保護、出入国管理・収容制度の問題を抜本的に改善・透明化する「難民等保護法・入管法等改正法」の制定を目指します。

【日本維新の会】

<就労外国人政策 / 130>

  • 偽装難民問題に留意しつつ、難民及び難民申請者への医療・食料等の支援強化や難民申請プロセスの改善など、SDGsの考え方に基づき人道的見地から難民問題に取り組みます。

【公明党】

<5⑬ 外国人が安心して暮らせる多文化共生社会>

  • 2023年6月に成立した改正入管法によって、新たに創設された「補完的保護対象者認定制度」のもとで、例えば、ウクライナ避難民のような戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがあるなど、保護を必要とする方々を確実に保護し、補完的保護対象者として認定された方々については、条約難民と同様、制度上認められる医療・教育・就労などの様々な支援を円滑に実施していきます。

【日本共産党】

<5(3)あらゆる分野での人権保障を>

  • 難民条約、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の基準など国際人権法を順守し、法務省から独立した難民認定機関の設置など抜本的な入管法改正、入管庁改革を行います。
  • 国連拷問禁止委員会などから厳しく批判されてきた長期収容に上限を設定し、人身拘束はかならず司法審査を行います。難民認定申請中の強制送還を可能とする改悪は無効化します。
  • 戦乱など諸事情で日本に避難した外国人には、ウクライナ避難民と同水準の支援を行います。

【れいわ新選組】

<05 ⑭ ジェンダー、障害、国籍など少数者が排除されない社会を!>

  • 入管施設での人権侵害をなくす

【社民党】

<05-32 難民・移民と共生する日本社会を創ります。定住外国人の地方参政権を実現させます>

  • 2023年6月に「入管法」が改正されました。従来は在留資格がない外国人で難民申請している場合、強制送還の対象となりませんでしたが、今改正により3回目の申請から強制送還の対象となります。迫害されている母国へ追放することは、まさに「死刑執行のボタン」を押すことです。社民党は、現行の入管法を廃止し、入国管理と難民保護を分けた「出入国管理法」と「難民保護法」制定を主張しています。入管収容施設の人権侵害を防止し、非常に低い難民認定率の問題などに取り組み、移民・難民の排除ではなく、共生社会の日本をつくります。

2.外国人との共生に関する施策(主なもの)

【自由民主党】

<社会保障:369 外国人患者の受入体制の整備>

  • 地域医療に支障を来さず、かつ、外国人患者が、安全・安心に日本の医療サービスを受けられるよう、外国人患者受入れに関し医療機関が利用できる一元的な問い合わせ先(ワンストップ窓口等)の更なる拡充、医療通訳等の配置等、地域の医療関係者等の参画も得て、医療機関における外国人患者受入れ体制の充実を図る(後略)

<外交:651 人権外交の推進>

  • 企業の人権デュー・ディリジェンスの支援強化、ODAによる人権支援、厳しい立場におかれる在留外国人等への支援強化等を検討・実現します。

<教育:772 外国人の子供が日本社会で活躍するための日本語教育等>

  • 日本に在住する外国人が社会に溶け込み、また活躍する環境を整備するため、外国人の子供の就学を促進するよう、地方自治体における多言語の就学案内の送付や就学状況把握などの取組みを支援します。また、公立学校における外国人の子供の日本語能力や学力を保障するための指導を行う教師や指導補助者・通訳等の配置やICT機器・教材の活用など、学習者の日本語能力に応じたきめ細かな受入れ体制を構築します。更に、高校・大学等への進学の促進を行うとともに、キャリア教育支援を充実することにより、将来、我が国の社会での活躍を目指した学習意欲の向上を図り、日本人の子供と外国人の子供がお互いに学び合い、切磋琢磨し合う環境づくりに取り組みます。

<教育:773 真に外国人との友好を築く日本語教育>

  • 外国人労働者の増加や、日本語学習のニーズの多様化を踏まえ、第211回国会で成立した「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」に基づく認定日本語教育機関及び登録日本語教員の活用を含めた日本語教育環境の整備を進めるとともに、「地域日本語教育の総合的な体制づくり推進事業」などを継続的に実施・充実させるなど、真に外国人との友好を育むための環境整備を行います。また、海外における日本語の普及にも取り組みます。

<多様性・共生社会:857 在留管理と多文化共生社会の実現>

  • 外国人の適正な在留管理の徹底を図るとともに、多文化共生社会の実現のため、一元的相談窓口の設置、行政・生活情報の多言語化などの受け入れ環境整備を進めます。
  • また、国と地方公共団体、全国の一元的な相談窓口などとの連携を充実させるなど、効果的・効率的な支援の実施を推進します。
  • 更に、行政・生活情報について、我が国を訪れる外国人の国籍や使用言語などの多様化を踏まえ、多言語対応を推進しつつ、所要の体制整備を行います。国民と外国人の双方からの継続的な意見聴取や、基礎調査の実施などを通じ、外国人の生活上の諸問題を的確に把握し、共生社会の実現に向けた施策に反映させていきます。

<多様性・共生社会:861 特定技能制度の活用>

  • 特定技能外国人の受け入れに当たっては、受入れ企業と地方公共団体とが意思疎通しやすい環境を整えるなど共生社会の実現に資する取組みを進めてまいります。

【立憲民主党】

<人権:多文化共生 / p.17>

  • 「多文化共生社会基本法」を制定し、国民及び在留外国人が、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生することのできる社会を形成します。
  • 在留制度全般を見直すとともに、外国人一般労働者雇用制度の整備を推進します。

<人権:差別解消 / p.17>

  • あらゆる差別の解消を目指し、「包括的差別禁止法」を制定します。
  • 国連の「パリ原則」に基づいた、人権侵害からの救済、立法・政策提言、人権教育の推進や、人権侵害に対する調査や勧告など、既存の司法制度を補完し、より包括的な人権保護を実現するため、独立した人権救済機関を設置します。
  • 「ヘイトスピーチ解消法」における取り組みを拡大し、国際人権基準に基づいて、人種などを理由とする差別的言動を禁止する法律の制定など、あらゆる差別撤廃に向けた動きを加速させます。
  • インターネットやSNS上の差別や誹謗中傷、人権侵害等への対策を強化します。

【日本維新の会】

<就労外国人政策 / 129>

  • 地域社会における分断や、学校現場での混乱が生じている現状に鑑み、就労目的の外国人及びその家族について、我が国において円滑な社会生活等を営むことができるように支援する体制を整備するとともに、地域社会への参加を促進します。

<危機管理・防災インフラ / 269>

  • 日本に滞在する外国人の増加に対応し、災害時における行政による情報発信や避難所での多言語対応を充実させます。

【公明党】

<2④ 誰一人取り残されない学びのセーフティネット>

  • 不登校経験者や外国人などの学ぶ機会を確保するために重要な役割を果たしている夜間中学校を5年以内に全ての都道府県・政令市に設置をめざします。
  • 外国人やその子どもたちが日本語を学ぶ機会の充実と日本語教育水準の向上をめざして、認定日本語教育機関の拡充、日本語教室がない日本語教育空白地域への支援に取り組みます。高等学校での「特別の教育課程」による日本語指導の取組強化や、高等入試や進路・就職相談支援の充実などにより多文化共生社会を加速させます。また、外国人学校における外国人の子どもの健康確保のため保健衛生対策の取り組みを進めます。

<2⑪ 幼児教育・保育の無償化、質の向上>

  • 待機児童解消とともに、一時預かり、障がい児、外国籍の児童等への対応といった多様な保育ニーズへの対応を促進します。また、人口減少や少子化が進む中、人口減少地域における施設の多機能化等を通じた保育機能の維持、総合的な保育人材の確保など就学前の子どもの教育・保育のあり方について検討を進めます。

<2⑫ 困難を抱える家庭支援(ひとり親家庭、子どもの貧困対策、ヤングケアラー支援)>

  • 外国籍や外国語を母語とするヤングケアラーについては、家族ケアに加え、病院や行政手続きなどにおける通訳など過重な負担がかかっている現状を踏まえ、きめ細やかな支援体制を構築します。
  • 父母が離婚後もその責任を適切に果たし、父母の協議が子の利益の観点から行われることを確保するため、離婚後の子の養育に関する情報提供等を行う親講座や親ガイダンス、離婚前後のカウンセリング支援の在り方等について検討を行い(中略)ます。また、親講座や親ガイダンスに関しては、外国文化に配慮しながら各言語に対応したガイダンスを整備し、外国人への配慮も推進します。

<4⑧ 犯罪防止対策と人権の擁護>

  • 我が国ではさまざまな人権課題が生起しています。性的マイノリティをはじめ、障がい者や外国人などのさまざまな要因による差別や偏見、インターネット上を含めたいじめ・虐待・貧困等の人権問題を解消するため、関係省庁、地方自治体が連携して広報や相談体制等を充実するとともに、人権教育、啓発活動の取り組みを一層推進します。
  • 相手の反論を許さないほど威圧し、憎悪をあおるヘイトスピーチや犯罪行為であるヘイトクライムは、決して許されるものではありません。政府内にヘイトスピーチ及びヘイトクライム対策を専門とする部署を設置するとともに、公明党が主導し成立したヘイトスピーチ解消法の理念をもとに、さらなる実態調査や教育、啓発を行い、ヘイトスピーチ及びヘイトクライムの根絶をめざします。
  • 無国籍の子どもの実態を正確に把握するため、継続した実態調査を実施するとともに、国籍取得を支援するため、相談体制を拡充します。

<5⑬ 外国人が安心して暮らせる多文化共生社会>

  • 誰一人取り残さない共生社会の実現に向けて、「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」等を各省連携のもとで着実に推進します。とりわけ、外国人への相談窓口、日本語教育、就労支援等の充実を図るとともに、支援側となる専門家の育成等も推進します。また、緊急時等において、情報が適切に届くよう、多言語化などを推進し、外国人が孤立しない情報提供体制の構築をめざします。
  • 日本が魅力ある働き先として選ばれる国になるよう育成就労制度の趣旨を広く周知するとともに、育成就労制度を通じて外国人の人権保護や労働者としての権利性向上に取り組みます。加えて、育成就労制度への移行に伴う急激な変化が、関係者等の不利益や悪影響にならないよう必要な体制整備に取り組みます。

<7③ 被災者支援の一層の充実>

  • 多言語による災害に関する情報発信等、外国人が必要な情報を入手できる環境整備に取り組みます。また、スマートフォンアプリやSNSの特性を活かした災害情報の発信を強化するとともに、社会的混乱防止のため、誤った災害情報やデマ等への対策を講じます。

<10① 議員改革・政治改革>

  • 日本で生まれ育ち、納税の義務等を果たしている永住外国人への地方参政権の付与を実現します。

【日本共産党】

<5(3)あらゆる分野での人権保障を>

  • 外国人労働者に、日本人と同等の労働者としての権利保障を確立します。育成就労制度は、技能実習から名称変更しただけであり、早急に本人の意向による「転籍の自由」の保障と、労働者の家族帯同を認めるよう抜本的改善をはかります。
  • 日本生まれ、日本育ちの子どもとその家族に、実情に即した在留特別許可を積極的に進めます。
  • 新設された永住権取り消し規定を削除します。

【国民民主党】

<8 (5)育成就労支援>

  • 育成就労制度と特定技能制度が一体的な運用となり、日本で働く外国人が特定技能制度2号になると家族帯同で永住できることから、来日する子どもや家族の日本語習得や学校での学習機会の確保等、国が主体的な対策を講じていくよう取り組みます。

<10(9)差別の解消>

  • ヘイトスピーチ対策法を発展させ、人種、民族、出身などを理由とした差別を禁止する法律を制定します。また、性的指向、ジェンダーアイデンティティの多様性について、すべての国民が自然に受け入れられる共生社会の実現をめざします。

<10(10)外国人との共生>

  • 外国人の受け入れは、その能力が存分に発揮され、日本国民との協働・共生が地域社会や生活の現場においても推進されることが大前提です。困難な状況となっている地方における人材の確保、多様な言語に対応したワンストップセンターの整備など、地方自治体などに対する支援を強化します。また外国人児童・生徒の言語支援を強化するとともに不就学・進学の課題に取り組みます。育成就労の制度化にあたり、人権が保護されるよう、労働者としての権利性を高めます。

【れいわ新選組】

<05 ⑭ ジェンダー、障害、国籍など少数者が排除されない社会を!>

  • 外国人の包括的な権利を規定する法律を制定する

【社民党】

<05-29 実効性のある包括的差別禁止法と人権救済機関をつくり、共生の社会づくりをすすめます>

  • 異なる立場にある人を軽んじ貶めるハラスメントやヘイトスピーチ(憎悪表現)が横行しています。人間関係が希薄し人と人のつながりやコミュニティの重要性が叫ばれる中、性別や国籍、民族など、あらゆる差別を問わず誰もが等しく権利を保障され、人間らしく暮らせる社会づくりが求められています。
  • 2016年には「障害者差別解消法」(16年4月)や「ヘイトスピーチ解消法」(16年6月施行)、「部落差別解消法(16年12月施行)の三法が施行され、障害を理由にした差別、ヘイトスピーチ、部落差別が禁止されるなど、大きな前進がありました。2019年には「アイヌ施策推進法」も施行されました。しかし、いずれも啓発や教育を中心とする理念法にとどまっており、限界が指摘されています。他にも性的マイノリティや移住者など様々な差別についての立法活動も続いていますが、差別を廃絶するための実効性をどのように確保するかが課題です。
  • 社民党は、政府から独立した実効性のある人権救済機関を設ける包括的な差別禁止法の制定を提案してきました。いかなる差別も許さない共生の社会づくりのため、社民党は全力で取り組みます。

<05-32 難民・移民と共生する日本社会を創ります。定住外国人の地方参政権を実現させます>

  • そもそも長年日本に住み納税などの義務を果たしながら地域の課題について定住外国人が関与できないのは不合理です。定住外国人の地方参政権を実現します。

3.出典(最終閲覧日はすべて2024年10月16日)

※ 政治的中立性について:本ページでは各政党のマニフェストを紹介していますが、特定の政治思想、政党や立候補者を支持したり、否定するものではありません。

以上