難民に関するニュースが連続した2022年。
ロシアのウクライナ侵攻により多くの人々が難民となった2022年。
世界全体でも、紛争や迫害などで故郷を追われた人の数が初めて1億人を超えるなど、難民に関する多くの出来事がありました。
日本でもウクライナから避難した人々の受け入れが各地で進み、大きな注目を集めました。
夏にはアフガニスタンから逃れた方々が一斉に難民認定され、過去最多だった昨年の難民認定数が大幅に更新される見込みとなり、トルコ国籍のクルド人が裁判を経て初めて難民認定されるなど、これまでにない動きもありました。
一方で、秋には国連から難民保護制度について見直すよう日本政府に対し勧告が出されるなど、世界の情勢を踏まえた難民保護のあり方が問われています。
2022年も残りあとわずかとなった今、この 1 年を難民に関する出来事で振り返ってみませんか。
難民支援協会が今年公開してきた提言や意見も、あわせてご紹介しています。
1月
アフガニスタンから日本への避難の困難が報じられる
2021年8月のタリバン復権・アフガニスタン政権崩壊の影響を受けて、日本大使館やJICAの職員や元留学生など多くの人々が日本への避難を希望していましたが、その後来日が進んでいないと報道されました。(参考記事:毎日新聞2022年1月7日「アフガン、退避希望者なお多く 保護へ「特段の措置を」 身元保証の負担軽減必要」)
2月
ミャンマーの軍事クーデターから1年。
クーデターを受けて2021年5月から、日本に在留するミャンマー人には在留や就労を認め、難民認定審査を迅速に進めるとした「緊急避難措置」が取られてきましたが、難民認定をはじめとする保護は限定的な状況が続きました。(参考記事:共同通信2022年1月3日「ミャンマー難民クーデター後15人認定、この数字どう見るか 大幅増も「過去は5年で1人だけ」の〝受け入れ途上国〟」)
ロシアのウクライナ侵攻により、多くのウクライナ難民が国外に避難。
(参考記事:ロイター2022年2月25日「中・東欧にウクライナ難民、各国は支援表明 急増に備え」)
3月
岸田首相がウクライナから避難した人の日本への受け入れを表明。
これまでにない迅速な受け入れ表明がなされ、民間からも支援の手が多数あがりました。2022年11月までに約2千人が受け入れられました。(参考記事:NHK2022年3月2日「岸田首相 ウクライナからの避難民 日本への受け入れを表明」)
▶参考:「ウクライナ難民の受け入れから考える ー より包括的で公平な難民保護制度とは」(難民支援協会)
4月
政府専用機でウクライナからの避難民20人を受け入れ。
(参考記事:NHK2022年4月5日「ウクライナから避難民20人が政府専用機で到着 政府対応は」)
5月
「難民等の保護に関する法律案」を野党が参議院に再提出。
2021年6月提出法案の修正案。与党の入管法改正案の対案として、難民認定に関する規定を独立させ、難民等の保護・国際社会の取り組みに寄与することを目的としました。(参考記事:時事通信2022年5月10日「入管法改正で野党が対案 「難民保護委」設置」)
▶参考:解説「難民等の保護に関する法律案」(難民支援協会)
出入国在留管理庁が2021年の難民認定者数等を発表。
難民認定者数は過去最多の74人となる一方で、難民不認定とされた人の数は1万人を超えました。(参考記事:時事通信2022年5月13日「21年の難民認定74人 過去最多、ミャンマー情勢受け―入管庁」)
▶参考:「2021年の難民認定者数等の発表をうけて」(難民支援協会)
トルコ国籍のクルド人男性が難民不認定の取り消しを求めた裁判で、札幌高裁が不認定処分を取り消す判決。
(参考記事:朝日新聞2022年5月20日「「トルコで拷問」クルド人男性の難民不認定処分取り消し 札幌高裁」)
6月
6月20日「世界難民の日」に向けて、難民に関するデータを国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が発表。
紛争や迫害により故郷を追われた人の数は2021年末に8,930万人、2022年5月推計で1億人を超えたと発表されました。(参考記事:UNHCR「数字で見る難民情勢(2021年)」)
▶参考:「UNHCR・2021年Global Trends Report(年間統計報告書)発表を受けて」(難民支援協会Twitter)
7月
第26回参議院議員選挙にて、各政党のマニフェストで難民保護や外国人との共生政策が取り上げられる。
▶参考:「参院選2022:難民保護や外国人との共生政策に関する各政党マニフェストまとめ」(難民支援協会)
8月
トルコ出身のクルド人男性に対する難民不認定処分を取り消した札幌高裁判決を受け、法務省が男性を難民認定。
トルコ国籍のクルド人が日本で難民認定された例は初めてとなりました。(参考記事:共同通信2022年8月9日「クルド人男性を難民認定 札幌入管局、トルコ国籍は初」)
2021年のアフガニスタン政権崩壊で日本に退避してきた98人に難民認定。
年間の難民認定者数の過去最多(2021年・74人)を更新することが確実になりました。(参考記事:朝日新聞2022年8月23日「アフガニスタンからの98人を難民認定 異例の規模、過去最多を更新」)
9月
入管法改正案、秋の臨時国会への再提出見送り。
2023年の通常国会への再提出を目指すと報道されました。(参考記事:毎日新聞2022年9月7日「入管法改正案、再提出見送り方針 政府「さらなる検討必要」」)
入管施設に収容されていたカメルーン人男性の死亡について、水戸地裁で国側の責任を認め賠償を命じる判決。
(参考記事:日経新聞2022年9月16日「入管収容のカメルーン男性死亡、国に賠償命令 水戸地裁」)
10月
国連・自由権規約委員会による日本政府報告書審査が行われる。
難民保護や入管収容を含む、様々な人権課題について審査されました。審査に先立ち、JARも加盟する「なんみんフォーラム(FRJ)」が、難民等の人権保障の改善を訴えた報告書を委員会に提出しました。
▶参考:「第7回ICCPR政府報告書審査(⽇本)にあたっての⾃由権規約委員会への報告」(なんみんフォーラム)
UNHCRが難民の窮状改善に貢献した人や団体を顕彰する「ナンセン難民賞」を、ドイツのメルケル前首相に授与すると発表。
120万人超のシリア難民を受け入れた指導力、難民の社会統合のため教育や職業訓練に尽力したことが評価されました。(参考記事:日経新聞2022年10月4日「メルケル前独首相に難民賞 UNHCR、受け入れ評価」)
11月
国連・自由権規約委員会より日本政府に対し、日本の人権状況に関する勧告。
難民認定率の低さに懸念を示し、国際基準に沿った包括的な庇護法の迅速な採択などを求めた勧告が日本政府に対し出されました。(参考記事:共同通信2022年11月3日「国連、日本の入管死亡に懸念 「人権救済機関」創設を要求」)
グランディ国連難民高等弁務官が来日。
グランディ氏は記者会見で、日本政府の難民政策は不十分であり「ウクライナ避難民」を他の難民と区別していることについても「同じように処遇されるべき」と指摘しました。(参考記事:朝日新聞2022年11月9日「難民受け入れ「統一的な対応」を グランディ国連難民高等弁務官」)