難民支援協会(JAR)で生活支援や法的支援を担当している、菅 幸恵と申します。
この秋から冬にかけての支援の様子をご紹介させてください。
昨年来のコロナの感染拡大は、難民の方の生活にも大きな影響を及ぼしました。もともと不安定な生活を送っていた方々が、一層困窮に追い込まれています。
来日後、難民申請をしながら日本語を勉強してやっとの思いで就労していた人も、勤め先が休業となってしまったり、これまで支えてくれていた知人たちがコロナの影響で失職し、周囲に援助を求めることができなくなったなど、生活がより厳しくなったという相談が増えています。また、最低限の生活は維持できていても、紛争や軍事政権による抑圧が続く母国に残した家族を想い、不安を募らせる方からの相談も増えています。
他方、コロナ禍でも難民認定の審査は進みます。難民申請が棄却されると在留資格を失ってしまいます。公的に頼れるものもなくなり、収容のリスクがあり、危険な母国への強制送還を恐れるなど、途方に暮れてしまう方もいます。
JARでは現在、年間約700人の難民の方々からの相談を受けています。コロナ感染の防止に配慮しながら、事前予約制にして対面での相談を継続し、お一人おひとりの抱える事情を丁寧に聞き取り、必要な支援につなげることを心がけています。
体調を崩した難民の方が、すばやく適切な医療を受けられるように
食料や物資の提供、住居の確保などの生活支援、難民申請などの法的支援に加えて、難民の方々の健康や、ときに命に直結する重要な支援に、医療面での支援があります。難民の方々の中には、健康保険に入ることができず、公的支援も受けられない方が多くいますが、慢性疾患を抱える方、来日してから病気や怪我をしてしまった方など、様々な理由で医療を必要としています。
この秋から冬にかけても「体調が悪い」、「何日も熱が下がらない」などの相談がありました。健康保険に入っている方には、なるべくご自宅の近くで外国人の対応をしている病院を調べて紹介し、多言語と日本語が併記された問診票の記入を案内したりといった支援をしています。
保険がない方には「無料低額診療事業(※)」を行っている病院を探したり、状況によっては診察費を支援するなどして医療サービスにつなぐようにしています。病院の体制などによっては、私たちスタッフが病院での診察に付き添って通訳を行います。その際には体調などのご本人の心配事を医師に正確に伝え、また、医師や看護師からの説明をきちんとご本人に分かるようにお伝えすることを常に心掛けています。
また、コロナの特徴的な症状を訴え相談をしてきた方には、発熱外来を即座に案内するようにしてきました。コロナと診断されても重症でない限り自宅療養になりますが、食べるものもなく外出も禁じられている、という相談が複数ありました。そのような方々には、JARから高たんぱくのゼリーやスポーツドリンクなどを発送し、自宅療養の期間を凌いでいただきました。
荷物をお送りした方の中には、「食べられるものがなく、空腹で薬を飲んだら心臓がとても痛んで苦しかった。口にできるものを送ってもらえて良かった」という方もいました。このような支援を行いながら、他に心配をして食料を送ってくれる家族などの身近な人がいないという事実に、日本に暮らす難民の方々が社会から孤立してしまっていることを、改めて感じました。
コロナから回復し、「これからがんばって仕事を探す」という方もいれば、いまだに後遺症に苦しんでいる方もいます。また、コロナ以外にも来日前から基礎疾患を抱える方、来日後に病気にかかってしまう方など、医療を必要としている方は、日本で暮らす私たちと同様にいます。難民の方々が必要なときにできる限り迅速に医療につなげられるよう、病院で働く方々との関係づくりや、流行りの感染症についての情報収集なども日ごろから意識的に行っています。
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日に日に寒さが増し、収まらないコロナ禍で暮らしや健康に不安を抱える難民の方たちが増える中、一人でも多くの難民の方たちが安心して生活できるよう、試行錯誤しながら、今私たちにできる限りの支援を行っています。今後もこれらの活動を続けるために、皆さまからのご支援を必要としています。
本格的な寒さが難民の方々の生活を直撃する前に、皆さまからの暖かいお力添えをいただけましたら幸いです。
※写真はイメージです。個人が特定されないよう、一部の情報を変えて掲載しています。