新型コロナウイルスの影響で新規に来日する方が減った一方で、難民支援協会(JAR)を訪れる難民の方々には、母国での迫害の記憶を抱えながら日本で脆弱な立場に置かれているなど、依然として困難な状況が続いています。
JAR事務所には、来日してからしばらく経ち、それぞれの地域で日々を暮らしている方々が相談に訪れています。一人ひとりが個別の事情を抱え、必要としている支援や利用できる制度も異なり、また、利用できる制度が非常に限られる中、私たちにできる限りの支援を、日々試行錯誤を重ねながら行っています。
私たちが現在、相談を受けている方々の例をご紹介します。
Case 1: 強制送還の不安を抱えながらも転職活動を続けるHさん
数年前に来日した、難民申請中のHさん。就労許可を得てホテルで働いていましたが、コロナの影響で雇止めにあい、今は日雇いで生活をしながら転職先を探しています。先日、入管から難民認定審査のための初めてのインタビューの呼び出し状が届き、それ以来ストレスで眠ることができなくなってしまいました。インタビューでは、自身の難民性を証明するために母国での迫害の状況を事細かに説明する必要があり、当時の恐怖感を思い出してしまうことに加え、インタビューの結果、難民に認定されなければ身の危険のある母国に強制送還されてしまうのではないか、という大きな不安を抱えています。
Case 2:難民不認定への審査請求が棄却されてしまったCさん
未就学児の女の子を連れて母国から逃れて来たシングルペアレントのCさん。数年かけて難民申請を行っていましたが不認定となり、その後行った審査請求も先日棄却されてしまいました。在留資格を失うとともに、就労許可や国民健康保険などもなくなってしまったため、今後の生活や法的手続きの相談をしたい、とJARに連絡がありました。
Case 3:家を探すことになったKさん
来日して数年たち、難民申請中のKさん。就労許可を得て働き、友人の家に間借りをして生活していましたが、友人がその家を引き払うことに。転居先の相談にJARを訪れました。
Case 4 : 体調が悪く相談にきたRさん
コロナ禍が始まる直前に来日したRさん。もともと糖尿病を抱えていましたが、国民健康保険がないため高額となる医療費を払うことができず、来日後は病院に行くことができていません。今回、体調不良を感じてJARに連絡をしてきました。
※個人の特定を防ぐために、上記の内容は複数の方の事例をもとに再構成しています。
このように様々な状況にある方々からの相談に対して、それぞれが抱えている困難などについて慎重に聞き取り、ご本人とともに対応を考え、情報提供も行い、必要な支援につなげていくことを心掛けています。
今後も必要とされる支援
✔︎ 生活・法律・就労相談などに個別に対応し、支援する
JARに相談に訪れる難民の方々は、日本に逃れて来た理由や背景、来日後の難民申請の状況、在留資格や就労許可の有無、住居や生活、収入や就労状況など、一人ひとり置かれている立場や状況が様々で、必要としている支援も利用できる制度も異なります。スタッフが相談に応じ、その方自身ができることも見つけながら支援を行い、状況に応じて医療機関への同行や法的手続きのサポート、就労支援など個別の対応を行っています。
✔︎ 生活をつなぐために必要な食料・日用品を提供する
生活に困窮している方に対して、食料やマスク・石鹸などの日用品をお渡ししています。感染リスクや交通費がないことなどから事務所に来られない方には、自宅・滞在先への発送も継続しています。深刻な相談の後でも、食料をお渡しする際にはほっとした表情や笑顔を見せてくださる方も多く、お渡しする食料の中に故郷のものを入れるなどの工夫もしています。
✔︎ 必要な情報を多言語で届ける
緊急事態宣言やワクチン接種についてなど、日本政府の方針や施策は日々刻々と変化しています。難民申請者の方々の暮らしにも影響する情報や利用できる制度等について、多言語化し、メール・ウェブサイト・チラシを通じて情報を届けています。
皆さまへの夏のご寄付のお願い
日本に暮らす難民の方々は依然として困難な状況にあり、コロナ禍でより脆弱な立場に置かれている方も少なくありません。私たちは、そういった方一人ひとりに向き合って支援を行い、また、政策提言や広報活動など社会への働きかけを行いながら「難民の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会」をつくることを目指しています。
このような難民支援協会の活動は、その多くがご寄付によって支えられています。
もしご支援いただければ・・
そしてご支援によって、難民の困難に向き合うJARの様々な活動を続けることができます。
日本に逃れてきた難民の方々を支えるこれらの活動を今後も継続できるよう、8月末までに、皆さまの温かいお力添えをいただければ幸いです。