この冬は、厳しい寒さの中、新型コロナウイルス感染拡大の勢いが続き、1 月には再び緊急事態宣言が発令されました。
日本に逃れてきた難民の方々にとっても初めての経験となったコロナ禍の冬、どのように過ごしたのでしょうか。
感染拡大が始まる以前の2019年に来日した方々からは、コロナ禍で外出する機会が少なく、故郷では家族と過ごしていたクリスマスや年末の集まりもなかったため、「冬の間、人と接することはほとんどなかった」「自分は孤立している」といった、寂しさや孤独を感じている声が多く聞こえてきました。JAR の支援を受けながら難民申請をし、その後就労資格を得られても、短期か週 2 – 3 日程度の求人機会がほとんどで、生計を維持するに必要な長期的なフルタイムの職には多くの方が就けていません。難民の方々の就職活動は例年より明らかに厳しくなっており、両手では数えきれないほど繰り返し求人に応募しても、面接の機会を得られることはほとんどありません。コロナ感染の不安とともに、経済的な困窮や難民申請の結果を待つ不安定な毎日が一層孤立感を際立たせ、経済的のみならず、心理的な負担がこれまで以上に増しています。
JARに相談に来る方の約7割がアフリカ出身ですが、厳しい日々の中で喜ばれているのが、JARからの支援物資に入れたアフリカ系の食材です。この冬は、孤立感を和らげるために例年開催しているサロン(皆で食事をしたり、アクティビティをする会)もコロナの影響で開催できなかったため、少しでも心が温かくなるような瞬間を感じてもらえたらと、日頃から提供している食品に加えて、ヤムイモなどの粉を練り餅状にして食べる「フフ」や、小麦粉から作る小さな粒状のパスタ「クスクス」といったアフリカ系の食材もお渡しできるようにしました。
故郷の食材を渡すと、それまで暗い表情をしていた方がぱっと笑顔を見せてくれたり、「母国の料理を作れるのが嬉しい」と喜ばれます。コロナで外出も制限される中、せめて食べるものだけでも、食べたいもの、慣れ親しんだものを食べることで安心にもつながり、命をつなぐためだけでなく、心を潤すためにも重要なことだと支援現場では再認識しています。今後もそういったものを食べていただけるよう、できる限り工夫していきたいと考えています。アフリカ系食材については、難民の方にヒアリングを行い、エグシ(メロンのような野菜の種)やガリ(キャッサバを加工した食品)といった、なかなか日本では調達が難しいものにもニーズがあるとわかり、提供するようになりました。また、食材は保存可能なものに偏ってしまいがちですが、栄養バランスが偏らないよう、野菜や果物、タンパク質を含む食材も提供できるよう栄養面にも配慮しています。
事務所で重い相談をした後でも、食料を渡す時には、調理方法や使う道具について難民の方からスタッフが教わるなど、自然と会話がはずみます。冬が終わってもまだ先行きが見えない厳しい状況が続きますが、こうしたひと時を挟みながら、難民の方々とともにこれからも歩んでいきます。
この冬の支援実績(期間:2020年12月1日~2021年2月28日)
・事務所や収容所等での相談件数 170 件
・電話での相談件数 582 件
・シェルター提供人数 12 人 ( うち 1 名期間内に入居)
・物資の郵送数 141 個(支援事業部・定住支援部の支援を含む)
この冬いただいたご支援*
・ご寄付の総額:42,119,441 円(1,279 件) ※下記を除く
・古本でのご寄付(バリューブックス):864,479 円(425 件)
*冬の寄付の案内開始(2020年11月16日)から2021年2月28日まで
いただいたご寄付は、難民の方々への直接支援のほか、政策提言 や広報活動を含む、当会の事業全体の支えとなっています。心より感謝申し上げます。
冬の支援の現場から
厳しさが増す就労支援
何とか就職し、やっと生計をたてる見通しがたった難民の方々は、その矢先コロナ禍の影響で就職先が休業状態になるなど、再び不安な生活を強いられています。昨年12 月の時点で、新規求職中・転職希望の方を含め 120名を超える方から相談を受けました。紛争や迫害から逃れてきた難民の方々は、日本で生活ができなくなっても、母国に帰るという選択肢はありません。厳しい状況が続く中、JARでは、コロナ禍でも継続的に難民を雇用してくださる企業との雇用拡大に向けた協働など、就労支援を粘り強く行っています。
その結果、就職に繋がったケースもありますが、まだ多くの難民の方が求職活動中です。求職機会を拡げるため様々な企業へ相談し、就職率を向上させるため、面接の場にスタッフがオンラインで同席、より分かりやすい履歴書作成のための支援を行っています。
「私は就職が決まり、同僚のスタッフともうまくいっていて、今、とても幸せです。一生ここで働きたい」スタッフが面接まで同席し、無事に採用が決まった方からのメッセージです。しかし、日本の厳しい難民認定制度の下では、この方のように仕事が決まり前向きに働いていても、その後に難民申請の結果が不認定となるなど、在留資格を失うことが多い事実もまた難民の方々に重くのしかかっています。
コロナ禍でも地域の病院と協力し、実施したインフルエンザ予防接種
難民の家族が多く暮らす地域の病院に協力いただき、今年も子どもたちのインフルエンザの予防接種ができました。過去に地域で子どもたちのインフルエンザが重症化したことが何度もあり、毎年地域の病院にご協力いただいています。今年はコロナの影響で中止とせざるを得ないかと思いましたが、病院との打ち合わせを重ねて、何度も現場に行き、感染予防の動線の予行練習など万全の準備で臨みました。このような時期にも関わらず予防接種の取り組みを継続してくださった病院の皆さまに心から感謝しています!
当会の活動は、皆さまからのご支援により、継続することができます。
今後もあたたかいご関心・ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
※難民支援協会の最新ニュースレター(vol.22/2021年3月号)はこちらから