9月7日、難民支援協会(JAR)は、日本国内で難民支援を行うNGO8団体とともに外務省を訪れ、西村政務官へ「難民申請者の生活保障のための措置を求める申し入れ」を行いました。NGO側からは(1)来年度の予算で保護費の金額を増額してほしい、(2)現在の保護費支給に時間を要しているため、実務者レベルでの会合を設置してほしい、(3)今後の支援のあり方として、保護費が生活保護と同等になることと、難民認定審査に時間を要していることを踏まえて、難民申請者の就労が可能になるよう法務省と協議することを求めました。
西村政務官からは、(1)については来年度の保護費増額を目指して概算要求を出したこと、(2)については慎重に検討を進めること、(3)については長期的な課題として見直しを進めていくことが述べられました。
更にNGO側からは、保護費の根拠となっている1982年の行政監察が、保護費の対象を難民認定申請者に限定していないことから、保護費についても対象者の範囲の拡大が検討可能ではないかという提案をしました。また、難民を保護するための総合的な支援政策及び立法の必要性の提起も行いました。
厳しい現実に置かれた難民に、ぜひ皆様のあたたかいご支援・ご協力をお願い致します。
(現状についての報告はこちらからご覧下さい。)
外務大臣 岡田克也 殿
社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
カトリック東京国際センター
全国難民弁護団連絡会議
社会福祉法人 さぽうと21
難民・移住労働者問題キリスト教連絡会
特定非営利活動法人 なんみんフォーラム
社会福祉法人 日本国際社会事業団
社団法人 日本福音ルーテル社団
特定非営利活動法人 難民支援協会
昨今の難民申請者の急増に伴い、申請者への唯一の生活支援金である保護費(外務省が財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)へ委託して支給)の予算が不足し、多くの難民申請者が、2009年4月以降、何らの保護も受けられないという事態が発生しました。
支援団体はこの事態を受け、「難民申請者の生活保障のための措置を求める申し入れ」を2009年5月12日と10月13日に行うと同時に、2009年4月末から9月末まで「難民支援緊急キャンペーン」を通じて寄付を募り、難民申請者372名に対して、計26,694,892円の支援金を支給しました。さらに、同キャンペーン終了後も、生活に困窮している難民申請者への支援を含めると3,000万円を超える支援を行ってきました。
関係者の皆様のご尽力により、2009年度は保護費の予算が増額され、また今年度も、財政状況が厳しい中、予算増が実現されたことを心より感謝しております。また、関係省庁とNPOの協議会を通じて、関係者間で理解を深めることができました。
しかしながら、保護費が多くの申請者にとって命綱となっている状況は変わらず、いまだに多くの難民申請者が保護費の支給を待っている状況です。加えて、2011年度予算の概算要求基準において、社会保障費などを除いた経費を各省庁が一律1割削減することが盛り込まれたことにより、支援団体として保護費予算の拡充に危機感を持っていることから、この度の申し入れに至りました。
この間、法務省からも仮放免の弾力運用が発表されるなど、官民が連携して難民申請者の生活を支えていくことへの機運が高まっていると強く感じています。NPO側も難民申請者を支えるという「新しい公共」に取り組むことにより、「支え合いと活気のある」社会の構築へ微力ながら尽力したいと考えています。
つきましては、申請者にとっての命綱ともいえる保護費につきましては、来年度も今年度以上の予算を確保して頂くとともに、難民申請者の保護措置への迅速なアクセスを確保し、彼らの最低限の生活を保障するため、外務大臣に対し下記事項の通り申し入れをさせて頂きます。
なお、まもなく第三国定住による難民の受け入れが開始されますが、彼らが日本語教育を含む半年間の定住支援を受けられるのに対し、同じような状態ですでに滞在している人道配慮による在留許可を受けた人への支援は一切ないままです。これについても平等な扱いをしていただけますようお願い申し上げます。この点、及び、第三国定住全体の提言については追ってご提案をさせていただきます。
1.来年度、保護費予算が不足し、支援を必要とする難民申請者の最低限の生活が保障されないという事態が二度と発生しないよう、十分な保護費予算の確保をしてくださいます様お願いいたします。
2.困窮状態にある難民申請者が迅速に保護措置にアクセスできておりません。支援団体の調査によると、住居のない人が1カ月、それ以外の人では2カ月から4カ月の間、保護費の支給を待っている状況です。保護費支給に関する手続の簡略化及び支給現場レベルでの実務者会合の開催をしてくださいます様お願い申し上げます。
3.今後の保護費の支給が現在の生活保護と同等レベルで実施されるよう、さらなる見直しをしてくださいます様お願い申し上げます。また、現状では難民認定審査期間が平均13カ月 (加えて異議申立ての手続きに半年間以上)と長期間に及んでおります。法務省は難民認定審査期間を6カ月を標準処理期間とすることを決定しましたが、その間及び異議申立てにかかる期間も、申請者が保護費に依存することなく、自立した生活を送れるよう、申請から一定期間が経過した申請者に対しては、就労許可が得られるよう、法務省等関係省庁への働きかけをしてくださいます様お願い申し上げます。
参考:生活保護の開始までの日数
生活保護法第24条
(申請による保護の開始及び変更)
保護の実施機関は、保護の開始の申請があつたときは、保護の要否、種類、程度及び方法を決定し、申請者に対して書面をもつて、これを通知しなければならない。
2 前項の書面には、決定の理由を附さなければならない。
3 第一項の通知は、申請のあつた日から十四日以内にしなければならない。但し、扶養義務者の資産状況の調査に日時を要する等特別な理由がある場合には、これを三十日まで延ばすことができる。この場合には、同項の書面にその理由を明示しなければならない。
(4以下省略、下線は事務局で追加)