2024年11月29日、難民支援協会(JAR)は、つくろい東京ファンド、反貧困ネットワークとともに、政府(出入国在留管理庁)に対して、難民申請者に対する公的支援「保護費」の予算増額、難民申請者に対する住居支援(緊急宿泊施設など)の拡充を求める申入れを行いました。
難民申請者の日本での生活を支える唯一の公的支援の枠組みである保護費の不足や支給の遅延により、日本に逃れた難民の安心や尊厳、さらには生存権までもが脅かされる状況になっています。民間の支援のみでこの冬を乗り越えることは困難です。「保護費」の早急な改善が必要です。
▶事例1:アフリカA国出身の男性。保護費の申請を行ってから、3か月近くにわたって駅などで野宿をしていた。就労許可が無く、生活困窮が明らかにもかかわらず、保護措置不適当とされた。 ▶事例2:アフリカB国出身の男性。公園などでの野宿が続く中で保護費の申請を行うも、保護措置不適当とされた。保護費の再申請を行ってから1か月以上が経過するが、まだ結果は出ていない。日本での初めての冬を、野宿状態で迎えている。 ▶事例3:アフリカC国出身の夫妻。妻は妊娠中。路上生活の状態で保護費の申請。その後も決定しないままネットカフェや路上生活が続き、母子の命の危険があると判断し支援団体が保護。一時生活のための居所を緊急的に確保。その後、申請から約1か月後に保護措置不適当の判断。家賃も食料も医療費も支援団体で持ち出し。今後も続けていけるかわからない。 ※ニュースリリースから抜粋 |
来日後の不安定な生活、先が見えない不安で体調を崩す方が後を絶ちません。慢性疾患の治療や精神科の受診を希望される方も多くいます。宿の手配も喫緊の課題です。現在JARでは、母子、家族世帯、妊婦の方を含む約50人にシェルターや宿泊先の確保していますが、それでも支援が追いつかず、一部の方は野宿を余儀なくされている状況です。
保護費の課題については、こちらのレポート(難民申請者はどう生きてゆくのか?ー公的支援「保護費」の課題と生存権)をご覧ください。
難民申請者の唯一の公的支援「保護費」の制度的課題改善に向けて働きかけるとともに、引き続き、JARは目の前にいる難民の方々の最低限の生活を確保できるよう支援を行っていきます。
一段と寒さが厳しくなり、支援の緊急性は日々高まっています。JARでは寄付を募っています。ぜひ皆さまのご協力をよろしくお願いします。 ▶寄付はこちらから。 |
■ 申入書(抜粋) ※申入書の詳細はこちらをご覧ください。
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2024 年 11 月 29 日
法務省出入国在留管理庁 御中
保護費予算の増額に関する申入書
一般社団法人つくろい東京ファンド
特定非営利活動法人難民支援協会
一般社団法人反貧困ネットワーク
私たちは、関東圏で暮らす難民申請者の生活支援を行う民間支援団体です。日本に逃れた難民の安心や尊厳、さらには生存権までもが脅かされる現状を目の当たりにし、難民申請者に対する公的支援である「保護費」の改善を求めて、以下の2点を申し入れます。
1.申入れの趣旨
(1)難民認定申請者保護事業にかかる本予算の確保及び検証の実施。
• 補正予算の成立を前提とせず、本予算における予算の十分な確保を求めます。
• 最低限、2023 年度の年間予算に匹敵する額の保護費予算の確保を求めます。
• 保護費を受けることができていない難民申請者の実態を踏まえた予算額の検証を求めます。
(2)難民認定申請者保護事業における住居支援の拡充及び予算の確保。
• 最低限、1人あたりの住居費の額を 2023 年度の水準に戻すことを求めます。
• 難民申請者緊急宿泊施設の拡充を求めます。
2.申入れの背景
(1)保護費の重要性:難民認定申請者保護事業(保護費)は、難民申請者の日本での生活を支える唯一の公的支援の枠組みである。難民申請者の多くが、一定期間にわたり就労が許可されない、若しくは難民申請中の就労が一切認められていない。就労許可を得られた場合であっても、住所が定まらないままに就職活動をすることは現実的ではない。保護費の円滑な支給は、難民申請者の生存権の保障にかかわる重大な問題である。
(2)保護費予算の不足:難民申請者数の増加を踏まえた保護費予算の編成が行われておらず、難民申請者のうち、ごく一部の限られた人しか保護費を受けることができていない実態である。所持金が無く、野宿状態かつ就労不可にもかかわらず、保護措置不適当とされる事案が今年度においても多数発生している。また、保護費の運用に必要な人員や体制が確保されておらず、受給開始までに2か月以上の待機期間が発生している。
(3)本予算拡充の必要性:保護費の運用が立ち行かなくなっている現状において、前年度を踏襲する形で予算編成を行うべきではない。2023 年度には補正予算が組まれ、結果として過去 12 年間で最多の受給者数となった。この経験を踏まえ、2025 年度においては、2023 年度の年間予算に匹敵する額の本予算が最低限確保されるべきである。また、政府は委託先や民間支援団体との連携により、保護費を受給することができていない難民申請者の実態を把握し、その上で、難民申請者の生活困窮の実態に基づいた予算額の検証を行うべきである。
(4)保護費における住居支援の不足:現行の住居費の限度額(単身世帯において月額4万円)は、1983 年の制度開始以降の家賃価格の上昇を全く踏まえておらず、生活保護におる住宅扶助を下回る内容である。2023 年度にいったん引き上げられた住居費の減額には正当な根拠がなく、住居費の増額が必要である。難民認定申請者緊急宿泊施設(ESFRA)の利用者数低迷により、野宿状態となる難民申請者が多数(10 月だけで 30 名以上)に上っていることから、ESFRA の早期拡充もあわせて行われるべきである。