2013年11月25日
認定NPO法人 難民支援協会
ホームレス状態となる難民の状況を懸念
2013年10月末時点で、2013年の日本での難民申請者数が昨年を上回る2,600名を越えたことが分かりました(認定NPO法人難民支援協会調べ)。3年連続での難民申請者の急増を背景に、多くの難民申請者がセーフティネットから抜け落ち、ホームレス状態となり厳しい状況に置かれていることが懸念されます。このため、同協会をはじめとする支援団体では、緊急的な支援と制度改善を求めています。
過去最高の難民申請者数
認定NPO法人難民支援協会(東京都新宿区、代表理事:中村義幸)では、来日した難民への法的支援、生活支援を含めた総合的な支援を行っており、多数の難民申請者が支援を求めて来訪します。同協会では、支援を通じて各入国管理局での難民申請の状況を把握しており、その結果2013年10月末時点ですでに難民申請者数が2,600名を越え、過去最高を記録した昨年を越えていたことが分かりました。
申請者急増にあたり、難民支援協会へも多くの難民申請者が来訪しています。毎月ほぼ100件以上の相談を受けており、10月末時点ですでに1,200件を越えています。特に、生活に困窮した難民申請者からの相談が絶えません。寒さが増す中で、ホームレス状態となって夜寝ることができる場所がなく、事務所オープン前から事務所前で待ち、オープン後は待合室や相談室で温かい食事を取ったり仮眠をとったりされる方が次第に増えてきています。
難民申請者の困窮の背景
日本に逃れてきた難民申請者の困窮の背景には、結果が出るまで長期にわたり待機をしなければならず(異議申立期間を含めると、2年を越える事が一般的です)、その間の公的支援が十分ではない現状があります。公的支援を得るに当たっても審査に長期間かかり、通常数か月におよびます。また、難民申請時に正規の在留資格がない場合は、就労することが認められず、自力で生きる糧を得ることができません(表2)。就労資格がある場合にも、日本語教育や就労訓練が提供されておらず、職を得るためのハードルは高いままです。
緊急的な支援の必要性
上記の通りセーフティネットが少なく困窮状態に置かれている難民申請者は、これから本格的な冬が到来する中、健康状態が懸念されます。凍死のリスクさえ存在します。難民支援協会をはじめとした難民支援に関わる様々な団体では、シェルター(一時的な住居)や食糧の提供などを行っていますが、支援対象者が増加する中で十分な対応をしきれていません。難民支援協会でもシェルターは満室状態で、常にウェイティングリストに名前が掲載されている状態です。難民申請者が安心して暮らせるよう、幅広い支援と、制度の変革が急務です。
各国から難を逃れてきた難民が日本で再び安心できない状況に陥ることは、日本社会にとっても大きな問題です。是非ご取材を、お願いいたします。
以上
認定NPO法人難民支援協会について
難民支援協会は、日本に逃れてきた難民が、自立した生活を安心して送れるよう支援している認定NPO法人です。1999年設立。
– 事業内容:難民への法的・生活支援、コミュニティ支援、就労支援、政策提言・調査研究、国内外支援団体等ネットワーク、啓発・情報発信など
– 年間来訪・訪問支援対象者数:のべ2,000名以上
– 年間支援国籍数:約50ヶ国
*国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の事業実施契約パートナーです。
本件に関するお問い合わせ
認定NPO法人 難民支援協会 石川・石井
〒160-0004 東京都新宿区四谷1-7-10 第三鹿倉ビル6階
Tel:03-5379-6001|Fax:03-5379-6002|info@refugee.or.jp
(参考)制度改善への提案
難民申請者が急増し、過酷な状況に置かれている背景には、上述の通り、現在の制度の限界があると考えています。難民支援協会も加入している、難民支援に関わるNGOのアンブレラ団体であるNPO法人なんみんフォーラム(FRJ/東京都中野区、代表理事:大森邦子)では、難民保護法の制定を提案しており、難民認定制度や難民申請者の生活保障、社会統合などを法制化することが必要としています。
FRJの「難民保護法のための論点整理*」では、「難民は、多様な文化を日本にもたらし、社会を活性化させる大切な存在」と述べています。難民申請者が可能性を発揮できる状況を生み出すためにも、過酷な現状を日本社会の多くの方々に認識していただくことが必要であると、難民支援協会では考えています。
* FRJウェブサイト http://frj.or.jp/ からご覧ください。