解説記事・声明等

出入国管理及び難民認定法改正にあたっての意見

    パリナック・ジャパンフォーラム分科会国内難民支援部会(以下、当部会)では日本にやってきた難民の支援団体および国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のネットワークとして昨年起きた瀋陽日本総領事館での亡命希望者駆け込み事件以降、日本の難民政策を改善するための関係者による取り組みを歓迎しています。そして、難民認定手続きの改正が今期国会で初めて取り上げられる可能性が高まる中で、報道された点について支援の経験から意見を表明いたします。

    1. 今回改正されると報道された主要な2点について

    1) 「仮滞在」の設置について
    難民認定申請中の法的地位を安定させるという観点から歓迎いたします。また、許可制度を設けずにすべての難民認定申請者へ適用することを提案します。もし、仮滞在を与えられない場合であっても、収容・送還されず、生活に困窮している場合は最低限の生活保障がなされるよう強く希望します。
    2) 「60日ルール」の6ヶ月への期限延長について
    従来から批判の強かった申請期間制限に対し、改正のための取り組みがなされていることを歓迎するとともに、現状の実務と同様に申請期限を経過した場合でも受け取り拒否をせず、6ヶ月以内に申請を行った難民と同様に難民性の判断がなされることを強く希望します。また、期限を設定する場合には難民申請についての十分な広報がなされ、難民認定申請希望者が期限設定の前に手続についての情報を入手できる体制とすることを期待します。
    ページ下部「4. 難民申請に関する統計」をご覧ください。

    2. 今後の改善が待たれる点

    1. 真の難民を保護しまた難民認定手続をより公正なものとするために、独立した審査機関の設置、とりわけ異議申立のあり方について今後議論がなされ、よりよい制度への改正がはかられることを強く望みます。
    2. 制度改善に関しての議論では上陸時から認定後までを一貫した視点でとらえることが重要であると考えます。また、今後の政策立案に広く有識者、NGO等と協議する場を設けられることを求めます。
    2003年2月3日(月)
    パリナック・ジャパンフォーラム分科会 国内難民支援部会
    社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
    全国難民弁護団連絡会議
    特定非営利活動法人 難民支援協会
    社会福祉法人 日本国際社会事業団
    社団法人 日本福音ルーテル社団
    パートナー:国連難民高等弁務官日本・韓国地域事務所

    参考資料

    1. パリナック・ジャパンフォーラム分科会 国内難民支援部会について

    当部会は、国連難民高等弁務官事務所(以下、UNHCR)とNGOの日本における連携促進のための連絡会議であるパリナック・ジャパンフォーラムの分科会です。国内の難民支援を行うNGOをほぼ網羅したかたちで2000年1月に立ち上がりました。以来、パートナーのUNHCRとともに対応能力の向上やより良い難民申請者及び難民への支援を目的として毎月の定例会を中心に活動を行っています。

    2. この間の経緯

    中国の瀋陽日本総領事館において2002年5月8日に起きた亡命希望者駆け込み事件以降、立法府では自民党、公明党、民主党によって難民政策の見直しが提案されてきました。難民認定手続をつかさどる森山法務大臣も「難民認定の在り方が今のままでいいのか反省すべきこともいろいろある。人道とか人権に関する意見の変化もあるので、政府全体として審査体制の充実や整備の在り方を検討すべきだ」との発言もあり、見直しに向けての期待が高まっていました。
    その後、2002年8月には閣議了解による認定を受けた難民への支援措置の決定と、難民を扱う調整会議の設置、また年末には法務大臣発表により不認定理由の理由付記への取り組み等関係者の尽力により実現されつつあります。今後はより充実した難民保護の実現へ向けて関係者の一層の連携が期待される状況にあります。

    3.最低限の社会保障を求める国連勧告

    2001年3月20日国連・人種差別撤廃委員会による勧告(CERD/C/58/CRP)
    「(前略)すべての難民申請者がとくに十分な生活水準および医療についての権利を有するよう確保することについて、すべての難民に平等の資格を確保するために必要な措置をとることを勧告する。」

    4. 難民申請に関する統計(パリナック・ジャパンフォーラム国内難民支援部会調べ)

    1) 申請結果を待つ間の生活状況について
    当部会メンバーは昨年20ヶ国から来た約200名の難民申請者へ支援を行いました。その中で、23名が事務所に来た時点で所持金がなく、10名は住居がありませんでした。また、2名が病気のため救急車で病院へ運ばれました。難民申請者の非常に多くは日本で自立した生活が送れる人たちですが、特に故郷から逃れた直後などは困窮している場合があり、すべての人へ最低限の生活保障を行う必要があります。
    2) 難民認定制度の認知度について
    2001年は少なくとも12名が「来日してから最低でも6ヶ月以上、難民認定制度そのものを知らずに申請することができなかった」と回答しています。「警察でUNHCRの情報をもらいに入ったが教えてくれなかった」等の回答もありました。
    3) 難民申請の期限について
    申請後、認定を受けた者をみると、入国後もしくは迫害を受ける事情を知った日から60日以降に申請し、認定を受けている人が少なくとも5名に上ります。また、5名全員は平均して4.8年後に申請しています。よって、6ヶ月を超えて難民申請を行った場合でも、難民として認められることがあることに鑑み、仮滞在を全員に与え、審査を行う必要性が十分にあることが分かります。