内閣官房孤独・孤立対策担当室 御中
孤独・孤立対策の重点計画の素案等に対する意見
東京都千代田区西神田2-5-2 TASビル4階
特定非営利活動法人難民支援協会
代表:石川えり
電話番号:03-5379-6001
認定NPO法人 難民支援協会(※)は、「孤独・孤立対策の重点計画の素案等」についての意見募集(パブリックコメント)に対し、以下の意見を申し述べる。
1.日本で暮らす全ての外国人を対象とした施策の必要性について(IIIー1(1))
「孤独・孤立対策の基本理念」において、当事者の具体例として「在留外国人」が挙げられている。「在留外国人」とは、在留資格上の在留期間が3月を超える外国人を指す用語であり、短期滞在や非正規滞在の難民申請者が、施策の対象外とされることが懸念される。よって、「在留外国人」を「日本で暮らす全ての外国人」に修正するべきである。
正規滞在の難民申請者の中には、実質的に3月を超えて滞在しているが、在留資格上の在留期間が3月であり、「短期滞在」とされる者がいる。また、2020年に難民申請を行った者のうち、約6%にあたる215人が非正規滞在者であった。さらに、2020年末時点の被退令(退去強制令書)仮放免者のうち、1,535人が難民申請中である。仮放免中の難民申請者は、住民登録が行われないため地域による支援が届きにくく、就労が認められないことから、「つながりや助けのない状態(p.6)」に特に置かれやすい。
孤独・孤立による「痛みや辛さ(p.6)」への対応の必要性は、在留資格の有無や在留期間(※)によって左右されるものではない。むしろ、難民認定を得るまでの不安定さの中で、迫害のおそれから逃れた異国の地において、孤独・孤立が難民申請者に与える影響は非常に大きい。施策の対象者を、日本で暮らす外国人の一部に限定することは、「誰ひとり取り残さない(p.6)」との基本方針にも反するものであり、見直されるべきである。
2.外国人を意識した情報発信の必要性について(IIIー2(1))
「孤独・孤立対策の基本方針」において、支援情報が網羅されたポータルサイトにおける情報発信等を行うとしているところ、情報発信等は、やさしい日本を含む多言語で行うことを明記するべきである。
既に公開されている「孤独・孤立に関する各種支援制度や相談先を一元化して情報発信するホームページ(p.5)」は、日本語以外の言語による相談や支援のニーズを意識した内容になっていない。孤独・孤立の当事者として外国人を想定している中で、支援へのつながりやすさに、当事者間で差が生まれることが懸念される。外国人当事者の取り残されやすさの表れであり、基本方針において、多言語発信の重要性を強調することの意義は大きいと考える。
3.外国人を含む当事者からの意見聴取の必要性について(その他意見)
孤独・孤立の当事者として外国人を想定しているところ、「孤独・孤立に関するフォーラム」のテーマに外国人が含まれておらず、外国人特有の悩みやニーズを踏まえた施策の検討が困難であることが懸念される。重点計画の決定前に、外国人当事者や支援者の意見を聴取し、ニーズを十分に把握した施策の検討を行うべきである。
4.孤独・孤立対策の前提としての最低限の生活保障の必要性について(その他意見)
「孤独・孤立対策の現状」において、生活困窮による不安や悩みが孤独・孤立の問題につながる様子が分析されているところ(p.3)、日本で暮らす外国人の中には、生活保護を利用することができず、就労が許可されないなど、生きていくことすらも困難な状況に置かれる者がいる。孤独・孤立対策は「精神的な状態(p.6)」や「つながりや助けのない状態(p.6)」に対処するものであるとされるが、その前提として、まずは、日本で暮らす誰もが生活困窮に陥ることなく、最低限の生活を保障される施策が実施されるべきである。