解説記事・声明等

LGBTと難民

    2021年8月公開記事「性的マイノリティへの迫害から逃れること―難民とLGBT」は、こちらからご覧ください。
    Photography © 2010 Katherine Fairfax Wright

    「Call Me Kuchu(コール・ミー・クチュ)」という映画をご存じでしょうか。同性愛者を終身刑にできる「反同性愛法」の法案をめぐり闘った、ウガンダのセクシュアルマイノリティやその仲間たちを描いたドキュメンタリー映画。性的少数者への日常的な迫害が描かれており、彼/彼女らの置かれた状況を身近な問題として考えるきっかけを提供してくれる映画です。ウガンダの「反同性愛法」は2014年2月に成立し、国際的な非難が巻き起こりました。

    世界におけるLGBT-76ヶ国で「同性愛」を禁止

    セクシュアリティとは、身体の性、心の性、好きになる性などの組み合わせでできており、本来そのあり方は非常に多様であいまいです。セクシュアルマイノリティを意味する、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイ・セクシュアル、トランスジェンダー)という言葉は、日本でもここ数年、新聞やテレビなどのマスコミで、一般的に使われるようになってきました。今年3月には、渋谷区で「同性婚」に証明書を発行するという全国初の条例が成立するなど、行政においてもセクシュアルマイノリティの権利を保証する動きが出てきています。
    しかし、世界を見渡すと、セクシュアルマイノリティへの理解が十分ではない国が多くあります。例えば、同性愛を罰する国は世界に76ヶ国あり、そのうち36ヶ国はアフリカに集中しています*。ナイジェリアでも2014年初めに、同性愛者に対して最高14年の禁錮刑を課す新法が成立しました。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、難民条約に入っている国に対して、LGBTを理由に迫害を受けている人も保護の対象とするよう呼びかけており、多くの国が難民として認定しています。

    JARの取り組み-「LGBT弁護団」の立ち上げ

    JARにも近年、LGBTへの迫害を理由に逃れてきたという相談が寄せられています。なかには、激しい拷問などの強い迫害を経験している人もいます。迫害の背景が多様化する一方で、日本における難民の定義は非常に限定的であり、JARが把握する限り、LGBTによる迫害が理由で難民として認められた人は残念ながら一人もいません。
    このような深刻な状況を受け、LGBTへの支援経験がある弁護士とともに、2014年2月に弁護団を立ち上げました。すでに2人の支援を始めています。出身国の迫害情報や、受け入れ国の判例の収集を強化し、より多くの方を専門的に支援できる体制を整えています。また、LGBTへの理解がまだ十分にない日本社会において、認知啓発や問題の共有から力を入れて取り組んでいます。

    (写真:弁護団との打ち合わせの様子)

    映画「Call Me Kuchu(コール・ミー・クチュ)」の日本での上映については、上映会実行委員会が呼びかけています。ご興味ある方はこちらからお問合せください。
    *国際レズビアン・ゲイ協会の発表(2013年)
    ▼映画の公式予告編 (日本語字幕なし)▼