2009年1月に開始した、クルド難民女性への自立支援事業。試行錯誤を通じ、すこしずつ前向きな成果が見えてきました。「オヤ」を通じた事業から生まれた「オヤ・カフェ」も、1年半を迎え、毎回、満員御礼の定番イベントとして、ここまで育てる上げることができました。オヤ・カフェの場では、オヤを通じた自立支援事業の様子や成果を都度ご報告してきましたが、今後、過去の経緯や成果、課題をまとめ、報告していきたいと思います。
日本に逃れて来たクルド難民女性の状況
彼女たちの多くは、家庭内で子育てや家事を担う生活が中心であり、日本社会との接点が非常に限られています。そのため、日本語を習得する機会もほとんどありません。子どもが小学校に入ると、学校の先生とのやり取りや、学校からのお便りなどを通じ、日本語が出来ないことに対する「不自由さ」や「不便さ」などに直面するようになってきます。
「オヤ」が紡ぐもの
難民支援協会(JAR)では、社会から孤立しがちなクルド難民の女性たちに対して、「オヤ」を通じた自立支援事業を行なってきました。彼女たちが、自身の伝統技術であるレース編み「オヤ」の作品を作ることを通じて、横のつながりを強化し、コミュニティ内で支え合う力を蓄えることができてきました。
また、より魅力的な作品にするために、スタッフと話をする中で、自身の考えやアイディアを伝えるために、「日本語を学びたい」という声が、グループ内の一人ひとりから少しずつ聞こえるようになりました。
作品は、オヤ・カフェを通じて、日本の人たちに披露しています。参加者の方々からは、作り手の女性たちへのメッセージをいただき、JARスタッフが、ワークショップでクルド女性たちへ、フィードバックしています。
「伝えたい」からはじまった日本語教室
オヤ作りからはじまった自立支援事業ですが、現在は、女性たちの要望に応え、日本語教室も定期的に開催しています。始めは、ひらがな・カタカナを学ぶところから開始し、現在では、漢字の読み書きまで出来るようになった人もいます。また、以前は、通訳を介しての会話がほとんどであった月1回のワークショップですが、最近では、各メンバーが直接、自分が覚えた日本語でスタッフや日本語教師とコミュニケーションするような場面が増えてきました。
このように、クルド女性への自立支援事業は、少しずつ前向きな成果が見えてきました。しかし、参加しているメンバーのほとんどが難民申請中という厳しい状況は、残念ながら変わりません。同じく難民申請中のクルド難民の父親が、突然収容され、母子が取り残されたという事例もあります。
JARは、引き続き、女性たちの自立を目指した支援を実施していくと同時に、彼女たちが、適切に保護されるような難民受け入れ制度が作られるよう、政策提言を行なっていきます。
(参考情報)
*「オヤ・カフェ」の詳細はこちら
−現在「おばあちゃんにオヤを贈ろう!」キャンペーンにて、オヤのオリジナル・デザインを募集中です。
*アパレルメーカーとオヤの共同製作商品を作りました。詳細はこちら。
(写真1:日本語を学ぶクルド難民女性)
(写真2:オヤ・ブランド ”Azadi”。プランタン銀座にて)
(写真3:日本語の授業の様子)